THzアンプの実現を目指し、共鳴トンネル分布定数線路の理論的、及び、シミュレーションによる検討を行った。ここでは、特に、ゲイン、安定性、周波数帯域と、素子パラメータの関係に着目した。 この構成は損失のある伝送線路と同じであるが、負性抵抗により、損失が負、つまりゲインを持つことになる。しかし、共鳴トンネルダイオードはdcからTHz領域まで負性抵抗を示すため系が不安定になりやすい。また、共鳴トンネルダイオードの負性抵抗領域は電圧的には限られているので線形性を維持することも難しい。我々はこれに対して相補的にバイアスした共鳴トンネルダイオードペアを用いることにより、安定した特性が得られることを示した。また、共鳴トンネルダイオードペア分布定数線路のバイアス回路について検討し、その安定動作条件を明らかにした。次に、アンプの帯域幅を決める要素について検討を進め、ユニットセルの大きさと帯域幅に明瞭な関係があることを見出した。シミュレーションによれば、1平方μm程度のエミッタ面積を持つ共鳴トンネルダイオードを用いることにより、1THzを越える帯域の信号増幅が可能であった。 上記と並行して、デバイスプロセスの再検討も行った。エアブリッジ配線の採用により、従来の共鳴トンネルダイオードで問題であった、エミッタ-コレクタ間の寄生容量を低減することが可能となった。さらに、これを用いた共鳴トンネル分布定数線路の設計・試作を行った。今後、高周波特性の評価を行う予定である。
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