研究概要 |
磁壁位置変調による磁気センサを作製するために,Si基板上に Ta(5nm)/CoFeB(10nm)/Cu(2.2nm)/CoFe(3nm)/MnIr(20nm)/Al(20nm)の巨大磁気抵抗膜をマグネトロンスパッタ法で作製し,光リソグラフィにより,幅30μmのストリップラインに加工した。ストリップライン両端の電気抵抗は,磁界を加えることにより,0.3%ほど変化した。これをブリッジ回路に組込み,ブリッジの出力回路をオペアンプを用いた回路で増幅して,信号をシンクロスコープで観察した。磁化固定層と磁化自由層の角度を90°に設定し,自由層の磁化方向の90°方向に1kHzの交流磁界を加えた直交配置のときは,交流磁界の振幅の値に応じた1kHzの出力信号が得られ,地磁気より小さい0.02Oe程度までの磁界を検出することができた。一方,磁化固定層と磁化自由層を平行に設定し,磁化自由層の磁化方向に平行に1kHzの交流磁界を加えた平行配置のときには,交流磁界が2.5Oeを超えるまで,信号を検出できなかった。これは磁化自由層の保磁力が,磁化曲線の測定から約2Oeであることに対応している。しかし,2.5Oeを超えた磁界に対する出力信号の変化は,直交配置の場合より,急峻な値を示した。この平行配置の場合は,磁壁移動によって,磁気抵抗変化が起こっていると考えられ,低磁界での感度を高めるには,磁壁抗磁力を低減する必要があることが明らかとなった。
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