研究概要 |
磁壁位置変調方式による磁気センサの感度を高めるため,磁気抵抗素子部と交番磁界発生用の電流線を分離したセンサ素子を開発した。巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用した磁気抵抗素子部は,Si基板上に成膜したTa(5nm)/CoFeB(10nm)/Cu(2.2nm)/CoFe(3nm)/MnIr(20nm)膜を光リソグラフィで幅30μm,長さ200μmのストリップラインに加工して作製した。一方,このストリップラインに交番磁界を加えるための幅100μmのAlの電流パターンを,GMR素子のパターンの上に,GMR素子との間に絶縁層を設けた後,形成した。まず,Alパターンに電流を流すことによって,交番磁界を発生させ,この交番磁界によるGMR膜の磁化自由層の磁壁の運動をGMR素子の抵抗変化を観察することで確認した。次いで,Alパターンには,140kHzの電流を,GMR素子には,1kHzの検出磁界を加えることで,磁壁位置変調方式の有効性を検証した。検出磁界を一定に,140kHzの交番磁界の強度を変化させたところ,約2Oeを超えたところで,急激にGMRの出力の増大が観察された。これは,交番磁界が,磁化自由層の保磁力の約2Oeを超えると,磁壁が振動的に運動するようになり,外部磁界に対する感度が高まって,出力が増加したものと考えられる。適切な交番磁界を加えることで,数nT(ナノテスラ)の値まで検出可能であることが明らかとなった。さらに,さまざまな形状に加工したCoFeB磁化自由層の磁区構造と外部磁界に対する運動を調べ,最も,感度が高くなる膜厚や形状について検討を進めた。
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