これまでの成果として、窒化ホウ素(BN)薄膜にカーボン(C)を添加することによる窒化ホウ素炭素(BCN)薄膜において誘電率が低減することを示し、次世代LSI配線の層間絶縁膜として有効であることを示してきた。今回作製した「メチルBN薄膜」とは、BNを母体にメチル基(-CH3)が付いた薄膜のことである。また、メチルBN薄膜はこれまでに我々が作製してきたのBCN薄膜とは少し違い、カーボンの結合手に水素を付加しているため微小なナノスペース確保しており、誘電率(k<2)を下げる効果がある薄膜のことをいう。 メチルBN薄膜をLSI配線における層間絶縁膜に用いるためには、熱特性やレジストアッシング時の耐酸素性が必要である。さらには加工が容易であることが不可欠である。今回、トリスジメチルアミノボロン(TMAB)ガスを原料にしてプラズマアシストCVD法によってメチルBN薄膜を作製した。メチルBN薄膜をドライエッチングによって加工し、熱処理前後の電気的特性の変化を評価した。また、メチルBN薄膜はCF系ガスによって加工が可能であることを見出した。従来に用いられている層間絶縁膜(SiOC系薄膜)とメチルBN薄膜との比較を行い、メチルBN薄膜の優位性を示した。また、LSIプロセスにおいては化学的機械研磨(CMP)用薬液を用いたウエットプロセスについて評価を行い、メチルBN薄膜が耐薬品性にも優れることを示し、メチルBN薄膜が次世代LSI配線プロセスに応用が期待できることを示した。
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