研究課題
本年は、まず、GaAs(111)B表面に自然に形成される周期20nm程の多段原子ステップに沿って多重結合InGaAs細線構造を分子線エピタキシーの手法で作り、これを伝導路とするFET素子を形成し、電子の伝導特性を線に平行と直交方向について調べた。この結果、ゲート電圧を閾値近傍に設定すると、低温では線を横切る運動が抑制され、量子細線的な振舞いを示し、1次元的な電子伝導となること見出した。今後は、1次元性が高い温度まで保持できる条件を探る。続いて、(111)B面上で形成が可能な量子ドットの形成法として、液滴エピタキシー法を検討し、GaAs系のドットの他にGaSb系やInAs系のドットの形成を可能とした。特に、液滴の堆積量やその後の、V族分子線への照射条件により、ドットの構造がどのように変化するかなどを明らかにした。また、得られたドット構造に対し、その蛍光特性を詳しく調べ、ドットの周辺にキャリアを発生させた時、それらがドットにどのように補足されるかを明らかにした。特に、光励起で生じた電子・正孔対を、拡散過程あるいは、電界の作用によるドリフトによって結晶内を移動させ、最終的に、ドットに流入する状況を制御し、電子の捕捉を高効率化する条件を明らかにした。以上の知見を基にして、量子細線型の伝導路の近傍に量子ドットを形成した素子構造に関する設計と物性予測を進め、光照射効果により、細線型伝導路のコンダクタンスが顕著に変化させるための条件を示してきた。今後は、これらの素子の試作を進め、光伝導機能の実証と特性の評価と改善を進め、光検出素子応用の道を拓く。
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