治療用の数多くのレーザの中、波長が2μm以上の赤外波はその有効性が確認されつつも、レーザ発振器から患部へのレーザ光の導光手段は従来の石英光ファイバが使えないため、最近は中空ファイバが多く使用されてきている。また、効率的な治療を行うためには、患部に接触して使用する先端素子は高効率でレーザ光を導光できることと、滅菌工程に耐える性能が要求されている。現時点ではこの要求性能を満たす中空ファイバが無いため、導光効率を犠牲にした短尺のガラスファイバ素子が使用されている。医療現場での感染が、社会問題になっている昨今、滅菌工程に耐える中空ファイバが実現されれば、その導光効率の高さ、経済性のメリットで、治療の可能性を大きくすることが可能である。本研究では、治療を効果的に行うために、強固でしかも患部にEr:YAGレーザ光を効率的に照射できる、種々の機能を有するレーザ先端素子の開発を行う。 1.高耐久性シールド膜付加先端素子の製作 硬組織に先端素子を用いた場合、切除された飛散物が先端部につき、磨耗を引き起こす。先端部との付着力、耐久性、透過率から最適な保護膜材料の検討を行い、無機溶液のOCクリヤーNo.300(OC300)を選択した。簡易なディッピング法を用いて、先端素子表面にOC300保護膜の形成を図った。 2.Er:YAGレーザ先端装置の構築と評価 Er:YAGレーザ先端装置(歯周疾患用、軟組織疾患用装置)に高耐久性高機能先端素子を組み込み、想定されるさまざまな形態に用いた時の伝送特性の評価を行う。内径0.32mm程度の先端素子を使用する。そこで、従来の充実型先端素子と比較しながら、その透過率や曲がりの影響などについてEr:YAGレーザ光と可視パイロット光を用いて評価を行い、伝送特性を明らかにした。
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