速度40Gbps以上で対応可能な光信号処理による誤り検出・訂正技術の実現を目標とし、平成20年度は以下の項目を検討した。 (1)符号の選択およびSOAの解析による実現可能性の検証 全光動作のメモリやバッファを用いず、演算過程で誤りが検出・訂正可能な符号であること、畳込み符号(平成17~19年度にて検討済み)よりも誤り訂正能力の高い巡回符号に着目した。その演算は排他的論理和(XOR)とフィードバックを縦属接続した除算回路を用いる。符号化に巡回ハミング符号を用いると剰余が誤りパターンと等しくなるため、剰余を受信信号にXOR演算することで誤り訂正まで可能となることを確認した。 以上の実現においては速度40Gbpsレベルで全光動作が可能なXORがキーデバイスとなり、集積化により小型化も可能な半導体光増幅器(SOA)を用いたマッハツェンダー(MZI)型全光スイッチをターゲットとすることとした。 まず最適動作範囲を解析的に検証するため、レート方程式を用いて入力光波長・パワーに対するSOA-MZI型XOR回路の動作検討を行った。しかしながぢ、測定で用いたMQW活性層を持つSOA自体の解析結果が測定結果を再現したいことが判明し、SOAの利得モデルを大きく見直す必要迫られた。 (2)符号の選択およびSOAの解析による実現可能性の検証(新手法) SOA動作の解析と測定結果の乖離の原因として、高注入電流動作時の利得がキャリア密度に対して線形に増加する従来モデルに問題があることに着目した。MQW構造は利得の飽和減少が顕著であることを数値解析に導入し、測定結果と整合性の良い解析結果を得ることができた(なお、その検討期間を3ヶ月延長とした)。 (3)SOA-MZIを用いた全光スイッチの動作検証 SOA-MZIの2つのSOAに独立に外部から信号光を入力し、干渉計の位相を制御することでXOR演算を行う回路を検討対象とし、速度10Gbpsの擬似ランダム信号に対して明瞭な開口を持つアイパターンを得ることができた。 (4)集積素子の設計 速度40Gbpsへの高速化検討を目的として、速度の律速要因となるSOAのキャリア回復時間の影響を軽減するpush-pull回路(信号光を2分岐して2個のSOAに1ビット相当の時間差をつけて入力することにより、キャリア回復過程の遅い位相変化成分をキャンセルする効果がある)を集積化したXOA回路の基本レイアウトの設計を行い、試作を進めた。
|