本研究では、サブテラヘルツでサンプリングをするオーバーサンプリングアナログ/デジタル変換器を実現するために、超高速高温超伝導ジョセフソン接合微小回路ブロックを、低温超伝導単一磁束量子(SFQ)集積回路内に埋め込む超広帯域実装技術を中心としている。平成20年度は「デバイスブロック作製・評価」と「ホスト基板形成」の2つの課題に対し研究を行った。 デバイスブロックは、サブテラヘルツで動作するデバイスを作製することが平成20年度の目標であった。これまで我々だけが有する高温超伝導積層ジョセフソン接合技術を用い、500GHzまでのトグルフリップフロップ回路の動作に成功した。ただし、薄膜中の酸素欠損が主原因で、回路歩留まりが顕著に低下したため、対策として層間絶縁層に酸素透過性の良い材料を選択し、作製プロセスの改善を進めた。また、ジョセフソン接合よりも構造が簡単なナノブリッジの作製も進め、その電気特性の評価も行った。これまで世界最小の30nm幅まで細線化することに成功した。光ポンプ法によりスイッチング特性の評価も進め、600nsの応答時間を得ている。 ホスト基板は、Nb系SFQ回路と、デバイスブロックを埋め込むリセス(くぼみ)からなる。平成20年度はSFQ回路の形成、深さ3-4μmのリセスの形成、ならびにデバイスブロック固定について検討を行った。プロセス条件の最適化により、上記の技術についてはほほ確立に至った。実際にデバイスブロックとして実績のあるGaAs-HEMTを用い、リセスにデバイスブロック配置することにも成功している。
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