本研究は、サブテラヘルツでサンプリングをするオーバーサンプリングアナログ/デジタル変換器を実現するために、最終的に超高速高温超伝導微小回路ブロックを、低温超伝導単一磁束量子(SFQ)集積回路内に埋め込む超広帯域実装技術を中心としている。平成21年度は高温超伝導回路作製・評価とホスト基板形成の2つの課題に対し研究を行った。 デバイスブロックは、サブテラヘルツで動作する回路の作製が目標である。この目標を目指し、高温超伝導体ナノブリッジの作製と評価を行った。再蒸着法と呼ばれる我々独自の方法によって、エッチングによる損傷を回復させた。その結果、世界最小の30nm幅まで細線化したナノブリッジを形成することに成功した。さらに、基板をMgOから格子ミスマッチの少ない(La_<0.3>Sr_<0.7>)(Al_<0.65>Ta_<0.35>)O_3に変更し、堆積するYBa_2Cu_3O_yの膜厚を30nmまで薄膜化したところ、ジョセフソン接合に匹敵する電流-電圧特性を示すようになった。再現性にも優れており、これにより回路化の見通しが立った。 一方、ホスト基板は、Nb系SFQ回路と、デバイスブロックを埋め込むリセス(くぼみ)からなる。平成21年度は前年度に引き続き、SFQ回路の形成、深さ3-4μmのリセスの形成、ならびにデバイスブロック固定について検討を行った。これらは前年度のプロセス条件では、埋め込みの第一段階として使用したGaAs-HEMTの特性が劣化したことを受けている。再度プロセス条件の最適化により、実装技術についてはほほ確立に至った。
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