研究概要 |
本研究では,実際に屋外伝送実験(フィールドトライアル)を行うことを目的としている.この伝送実験のために,我々が過去に無線信号処理装置(干渉キャンセラ)を試作した経験をベースに,Cooperative中継における送受信信号処理部全てを独力でFPGAによって試作した.試作した2中継2ホップ伝送システムの伝送特性測定を京都市街において行った.これによって,本研究課題の目標が達成されたと言える.実験結果は国内研究会,国際会議,雑誌論文として公表済みである. 特に今回は,パケット毎の送信電力制御を実現し,中継局数が1台の場合と2台の場合での総送信電力を揃える改善を施した.計算機シミュレーション等では容易なこの制御も,演算回路規模が制約されるFPGA実装では容易ではなく,独自の工夫によってかけ算回路を利用すること無く実現した. このようにして試作した装置を車載可能な形とし,京都市街を発呼車両,宛先車両に走行させ,大学構内建物屋上に設置した2局の中継局を利用した伝送特性を取得した.この際,パケットに含まれる制御ビットに応じて,2局の中継局をパケット毎に使い分けることによって,ほぼ同時に3種の伝送特性を計測している.この際に重要となるタイミング同期,周波数同期は,受信信号を元に行う方式を独自に実装している. 実験の結果,短区間フェージングやシャドウイング,パスロス,走行速度が複雑に変化する今回の実験においても,STBCを用いた協力中継が大きく伝送特性を改善することを明らかにした.
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