研究概要 |
カオスを利用した通信の研究は1990年代に始まったが,その多くはカオス実数値軌道をそのまま利用するアナログ通信であり,現在隆盛を極めるディジタル通信の諸技術の上に直接載せることが困難と考えられる.一方,本提案手法は,カオス力学系をバイナリ系列の設計に役立てる手法なので,CDMAやOFDMなどの既存のディジタル通信技術に容易に適合できる利点を持つ.第3.9世代携帯電話で利用されるOFDM方式では、通常のシンボル同期に加えて、サブキャリア間の干渉を無くすために高精度な周波数同期が必要であり、通話者の移動にともなうドップラー効果への対策が必須となる。 研究代表者らはこの状況に鑑み、2008年にサブキャリア間の直交性が必要ない擬似直交マルチキャリアCDMAを提案し、さらにこの結果を発展させたユーザ間の時間・周波数の同期誤差に強い耐性をもつGabor-Division(GD)-CDMAを提案した。本年度は、i)負のマルコフ符号を用いることでユーザ間干渉を独立同分布(i.i.d.)符号に比べ最大9/25まで削減可能であることを示した,ii)時間と周波数のオフセットを同時に推定可能な2次元同期捕捉法を提案した,iii)マルコフ拡散符号を用いることで,元来ベル型のGauss波形を時間周波数の2次元格子状に並べたGD-CDMAの周波数スペクトルが平坦になることを不した。以上の結果から,GD-CDMAは、OFDM方式で問題であったドップラー周波数シフト対策が可能であることが示された。これらの結果は、信号処理分野では最大規模の国際会議ICASSP2011に採録され平成23年5月公表予定である。
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