研究概要 |
本研究では,Gabor2次元表現に基づく通信システムを提案する.本方式はGauss包絡線キャリアに基づくので,同期誤差に対し頑強となることが期待される. 携帯電話・無線通信の分野ではOFDM(直交周波数多重)方式の実用化が急速に進んだ.OFDMはスペクトル効率が高くマルチパスフェージングにも強いものの,搬送波キャリアの直交性の保持を必須条件としており,ドップラー効果による周波数オフセット,時間同期の誤差に対し脆弱である. 研究代表者らはこの状況に鑑み,2008年にサブキャリア間の直交性を必要としない擬似直交マルチキャリアCDMAを提案し,さらにこの結果を発展させたユーザ間の時間・周波数の同期誤差に強い耐性をもつGabor-Division (GD)-CDMAを提案した.その特徴は以下の2点である. (1)負のマルコフ符号を用いることでユーザ間干渉を独立同分布(i.i.d.)符号に比べ最大9/25まで削減可能であることを示した (2)マルコフ拡散符号を用いることで,元来ベル型のGauss波形を時間周波数の2次元格子状に並べたGD-CDMAの周波数スペクトルが平坦になることを示した. 以上の結果から,GD-CDMAは,OFDM方式で問題であったドップラー周波数シフト対策が可能であることが示された。 当初計画のうち,(1)シングルキャリアCDMAにおけるチップ波形最適化の問題を解決した.(2)マルチユーザ受信器(MUD)におけるカオス拡散符号の性能評価を実施し,国内研究会で公表した.(3)マルチキャリアCDMAの設計問題に関して,擬似直交CDMAがGlobecom2008に採録された.この結果をさらに進めた周波数分割に基づくFD-CDMAを提案した.(4)通信路符号設計の力学系理論の視点について,LDPC符号におけるGallagerの復号法の力学系の解釈を与えた.以上の小課題について,当初計画の目標を達成した.
|