先に筆者らが発明したチャネルド分光偏光計測法は、高速、小型・軽量、高安定、機械的ないし電気的な偏光制御素子が不要など、従来の他の偏光計測法には無い様々な特長を有している。本研究では、この計測法の応用分野の拡大を念頭に置き、そのために基本性能の向上と機能の拡張を目指している。 平成20年度の第1の成果は、「分散補償型高次移相子を利用した波長分解能の改善」である。これまでチャネルド分光偏光計の波長分解能や波長範囲を制約してきた主たる原因は、高次移相子と分光器の分散特性のミスマッチにあった。この問題を解決するため、複数材料を組み合わせた分散補償型のセンシングヘッドを考案した。数値計算により、2材料、ないし3材料を組み合わせて分散補償を行えば、偏光測定の波長分解能を大きく向上できることが示された。さらに実際に2材料によるセンシングヘッドを試作しその有効性を検証した。第2の成果は、チャネルド分光偏光計測原理のミューラー行列測定への拡張である。本年度は2通りの光学系の構成について研究を行った。第1の「『1個の回転移相子』と『1個のチャネルド分光偏光計』を組み合わせた光学系」については、4回のスペクトル測定から16要素のミューラー行列の波長分布をすべて決定できることが実験により示された。試作した系は、シート型偏光子の不完全さを検出するのに十分な測定感度を有していた。一方、第2の「『波長走査光源』を用いるチャネルドミューラー行列偏光計」では、回転移相子などの回転偏光素子を利用すること無しに、全てのミューラー行列要素を決定できることが、数値シミュレーションにより示された。
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