先に筆者らが発明したチャネルド分光偏光計測法は、高速、小型・軽量、高安定、機械的ないし電気的な偏光制御素子が不要など、従来の他の偏光計測法には無い様々な特長を有している。本研究では、この計測法の応用分野の拡大を念頭に置き、本法の基本性能の向上と機能の拡張を目指した。 最終年度の第1の成果は、「チャネルド分光偏光計のさらなる誤差低減」である。我々は前年度までの研究で、残余の系統誤差の原因が較正に用いる偏光子の透過率変動であることを見出していた。しかしその影響を除去しても、方位角・楕円率角の誤差を目標の0.1degに低減できるのは被測定光が直線偏光に近い場合に限られていた。そこで我々は、残余の誤差をさらに精査し、最終的にその原因が特殊偏光素子(チャネルド分光偏光変調器)に残る僅かな偏光解消にあることを突き止めた。さらに、較正法を詳細に再検討することにより、最終的にいかなる偏光状態についても0.1deg程度の精度を達成することができた。さらに、この較正技術をミューラー行列測定へも拡張した。前年度までの光学系にこの新たな較正方法を組み合わせることにより、0.2%の精度で測定することができた。 第2の成果は、「チャネルド分光偏光計測法の干渉計測への拡張」である。波長走査半導体レーザとチャネルド分光偏光計測法に、Sagnac共通光路干渉計を組み合わせ、透明試料の2次元位相分布を測定した。そしてこの干渉計が振動や温度変化などの外乱に強いことを実証した。
|