研究概要 |
重篤な心臓疾患では,心臓壁を構成する心筋細胞に障害が出るが,現状ではその特性変化をベッドサイドで計測できる非侵襲診断装置はない.そこで本研究では,心筋の特性に関する非侵襲的診断法の確立を目的し,独自に開発してきた非侵襲的計測によって見出した心筋の生理現象に基づき,(1)心電信号に対応する電気的興奮の伝導に対する心筋の応答性,(2)心臓弁閉鎖に伴って発生する心音に対応した微小振動の心臓壁内の伝搬速度,の可視化の研究を行った.(1)心臓ファントムによる計測システム評価と波動伝搬特性計測の精度向上の検討:心臓のファントムとして,弾性球殼をシリコーンゴムによって作製し,加振器によってパルス状振動を伝搬させ,壁内に設定した数百点で,パルス状速度波形の空間分布の同時計測し,パルス状振動の伝搬速度の分散の算出,ラム波の伝搬速度の理論式をこの計測値に整合し,粘弾性率を算出し,本方法がヒト心臓に適用できることを実験的に示した. (2)病院におけるヒト心臓への適用の準備:以上で構築し評価した計測システムを臨床の現場で利用するに当たり,計算時間などの問題を再検討して準備を進めた.その結果,リアルタイム装置にはまだ難しいが,オフライン処理は可能であることが分かった.(3)心筋で生じる厚み変化との対応:健常者の心臓では,心電信号による興奮伝導によって,それに引き続き「厚み変化の伝搬」が生じる.そのため厚み変化を高い時間・空間分解能で求める必要がある.そのための手法に関して,各種パラメータの最適化など詳細に検討を行って,局所ごとの厚み変化の時間的変化のイメージングを実現した.高い時間分解能と空間分解能を有する.(4)局所伝搬速度算出の高精度化の検討:心臓壁の内部に任意の線状領域を設定し,その線状領域の振動位相の時間的変化を求めることによって,伝搬速度を安定化に算出できることを実験的に示した.
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