編隊飛行(フォーメーションフライト)する小型衛星群にVLF帯電磁波動観測器を搭載し、相互に連携をとりつつ同時多点観測する手法に必要な要素技術を検討し、下記の結果を得た。 1.編隊飛行衛星群の自律観測動作を模擬する連携シミュレータ上で、親衛星による最適観測モードの決定アルゴリズムを検討した。前年度は月周回衛星かぐやの観測データをもとに生成した疑似データを用いたが、今年度は静的な磁気圏モデルを仮定し、空間スケールやその形状が異なる種々の領域を衛星群が通過する条件下で最適解を得るための多数決論理・少数派優先モードの決定法を明らかにした。 2.計測した電磁波形データを衛星上で自動選別する方法について、かぐや搭載の波形捕捉器(WFC)に導入した方式牽評価し、機上のCPU性能やメモリ蓄積量などのリソースに制約を与えた場合の影響を定量的に示した。またプラズマ波動の偏波などの特性パラメータを軽負荷で算出する方法を提案し、機上のリソース内で実用に耐え得ることを示した。 3.前年度にデータベース化した雷起源電波(ホイスラ)の特性パラメータやGPS電波による全電子数などの観測結果と地球周辺プラズマの電子密度モデルの比較、かぐや衛星による衛星軌道上や月表層部の電子密度の空間構造の推定など、プラズマ中の電磁波の特性からの電子密度分布推定法を検討した。 これらの結果は、査読付き学術論文3編や、招待講演1件を含む計20件の学会発表で成果報告を行っており、将来の編隊飛行衛星計画の実現に必須となる数多くの要素技術が獲得できたといえる。
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