研究概要 |
本研究は,耐硫酸性を要求されるコンクリート構造物(主に下水道関連施設)において,結合材として用いられる耐酸性セメント系材料の耐酸性能を簡易に評価できる試験方法の開発を目的とするものである.ここでの簡易評価試験方法とは,微粉砕した硬化体を硫酸溶液中で反応させ,その時の硫酸溶液のpH変化を測定するもので,硬化体と硫酸との反応性を把握することにより,硬化体に用いられている耐酸性セメント系材料の耐酸性能を評価することを目指すものである.本年度は,結合材として普通ポルトランドセメント,混和材として高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカフュームを用いたセメントペースト硬化体を供試体として用い,実験を実施した.実験は,上述の簡易評価試験方法(用いた硫酸溶液のpHは1)とともに,供試体の硫酸溶液浸漬試験(用いた硫酸溶液のpHは1)も実施し,両者の結果について,比較検討を行った.混和材の置換率は,高炉スラグ微粉末が30〜50%,フライアッシュが20〜50%,シリカフュームが20〜30%で変化させ,2種類の混和材で置換した供試体,すべての混和材で置換した供試体も作製した.作製した供試体の水結合材比は0.35である.簡易評価試験の結果から,硫酸溶液のpH変化より供試体が消費した水素イオン量を求めたところ,水素イオン消費量の大きな供試体では,浸漬試験において若干の膨張ののちに腐食部の剥離が生じており,水素イオン消費量の小さな供試体では,比較的長く膨張が続いた後に腐食部の剥離が生じる傾向が認められた.これらの結果は供試体の細孔構造とも密接に関係すると考えるが,耐酸性能に関する簡易評価試験方法の有効性が示唆された.
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