研究概要 |
本研究は,耐酸性セメント系材料の耐酸性能を簡易に評価できる試験方法の開発を目的とし,微粉砕した硬化体を硫酸溶液中で反応させ,その時の硫酸溶液のpH変化を測定することで,硬化体と硫酸との反応性を把握することにより,硬化体に用いられている耐酸性セメント系材料の耐酸性能を評価することを目指すものである.本年度は,評価に用いる硫酸溶液のpHが評価結果に及ぼす実験的影響ならびに簡易評価試験におけるセメント水和物と硫酸との反応のモデル化について検討を行った.反応のモデル化では,水和反応によって生成される水酸化カルシウムならびにC-S-H, C-A-Hおよび結合材の未水和成分を考慮した.pHの影響に関する実験的検討では,硫酸溶液のpHを1.0と2.0とし,普通ポルトランドセメント以外に結合材として高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカフュームをそれぞれ0~48%,0~48%,14~20%置換したセメントペースト供試体7種類を試料として用いた.その結果,pH=1.0, pH=2.0溶液の硫酸との反応により消費された水素イオン量は,モデル化から求まる水素イオン量とほぼ一致する結果となった.ただし,全般的に,pH=1.0硫酸溶液で消費された水素イオン量が, pH=2.0硫酸溶液で消費された水素イオン量よりも低い値を示した.両者では,実験時の硫酸溶液量と試料質量の比,いわゆる液固比が異なり,その影響が懸念された.そのため,普通ポルトランドセメントのみを結合材とするセメントペースト供試体を用いて,pH=1.0, pH=2.0硫酸溶液を用いたそれぞれについて,液固比が結果に及ぼす影響を検討したところ,水素イオン消費量が,pH=1.0硫酸溶液では約15%,pH=2.0硫酸溶液では約25%,液固比によって相違することが明らかとなった.液固比の設定は簡易評価試験方法の根幹の部分であり,今後さらに検討を行い,適切な液固比を選定する必要がある.
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