研究概要 |
本研究は、塩害が生じるRC構造物の寿命予測手法への信頼性手法の導入への試みとして、塩害に影響を及ぼす各種不確定要因(使用材料の品質・暴露環境・施工条件)を点検診断時に区別し、これらを当該部材の構造性能評価に取り入れるための手法の構築を目的とした。 平成20年度は、約30年供用された桟橋の上部工から切り出した床版コンクリート中の塩化物イオン浸透性状に関する調査を基に,劣化性状の非一様性とその要因について検討した。その結果,コンクリートの塩化物イオン浸透性状は,部材のミクロな曝露環境等によって部材内部で大きくばらつくことが明らかとなり,構造物の性能評価および予測を精度良く行うためには,コアの信頼性に関する検討が必要であることを示した。また、当該床版の載荷試験を行い、劣化した部材の安全性・使用性の指標として耐荷性を評価する際には、載荷時の発生応力が大きい部位に位置する鉄筋の腐食性状・形態を把握することが必要であることを示した。さらに、構造性能を目視調査から簡易的に診断するための手法を提案した。 また、実構造物レベルにおける施工性の影響、特に、材料分離抵特性が部材の長期耐久性に及ぼす影響を把握するため、海洋環境に約8年間曝露した高性能軽量RC部材の各種性能について調査を行った。その結果、高性能軽量コンクリートの圧縮強度は打設高さ、すなわち材料分離特性に応じて変化したものの、静弾性係数および塩化物イオンの見かけの拡散係数はほぼ一定値であった。さらに、部材の曲げ載荷試験から、高性能軽量RC部材の耐荷性は暴露初期・長期ともに同程度であったが、長期暴露により変形性が低下することが考えられた。また、いずれの部材も打設面側から破壊する傾向を示し、長期材齢になるとより脆性的な破壊が顕著となることが考えられた。
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