研究概要 |
平成21年度に提案した判定基準に基づき鋼製橋脚の終局点を同定し,終局点への到達に対する限界値を設定した.この妥当性は,平成20年度,21年度に整備した複合非線形数値解析手法による数値解析および振動台実験により検証を行った.それを踏まえ,3方向地震動を考慮した構造安全性照査法を提示し,数値解析により検証した. 1.現行の1方向地震入力下での動的耐震設計では,終局点への到達の有無をひずみや変位などの物理量に対して終局点での限界値を設定し,応答値が限界値以内になることを照査する.しかしながら,3方向地震動下では載荷履歴によりこれらの限界値が大きく変動するので,十分な精度で限界値を設定することが困難になる.そこで,限界値を設定する物理量としてひずみ,変位以外の他の物理量の可能性を検討した.前年度での3方向地震動入力下での広範な鋼製橋脚モデルの数値解析データに基づき各種物理量の限界値のばらつきを統計的に評価した結果,動的照査法で用いる適切な物理量として復元力を採用し,対応する限界値を設定した. 2.1.で設定した限界値の妥当性を確認することを目的として,鋼製橋脚供試体の3方向地震動成分下での振動台実験および静的載荷試験を実施した. 3.1.における限界値に対して地震波の3方向成分を考慮した複合非線形動的応答解析により照査する方法を現行の耐震設計法の枠内で提案した.すなわち,鋼製橋脚は,現行と同様,はり要素を主体としてモデル化し,3方向地震動入力による複合非線形動的解析により求められる応答値に対して照査するものである. 4.3.で提示した照査法の妥当性を解析により検証した.いくつかの単橋脚や高架橋全体系システムを対象に,橋脚をシェル要素でモデル化した高精度の複合非線形解析を実施し,終局状態への到達状況を把握した.その結果,提示した照査法が妥当であることを確認した.
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