研究概要 |
大型環境試験装置を利用し,実物大鉄筋コンクリート製床版(以下,RC床版)供試体の塩害,凍害,および両者の複合劣化を与える促進試験を前年度に引き続き実施した.このうち,凍害についてはスケーリング量を評価するため,レーザー変位計を用いて表面の凹凸を測定する専用の計測方法を考案し,凍害のみを与えた場合と,塩害を与えた後に凍害を与えた場合とのスケーリング性状を比較検討した.また,10%NaCl水溶液による乾湿繰り返し試験により塩害を促進させた供試体に対して,輪荷重走行試験を行い,その疲労耐久性を評価した.その際,疲労損傷過程をたわみ計測,ひび割れ観察,各種非破壊試験(衝撃振動法,共鳴振動法)により評価した.その結果,塩害を受けたRC床版供試体は疲労耐久性が明らかに低下すること,またその損傷過程を非破壊試験により評価可能であることを明らかにした.また,疲労限界に達した本供試体に対し,炭素繊維シートによる補強を行った結果,顕著な延命効果が確認されたが,健全な供試体と同程度にまでは回復しないことが明らかになった.さらに,鋼材に予めひずみゲージを貼付しコンクリートを打ち込んだ健全供試体に対して輪荷重走行試験を行い,試験中の鋼材の動的ひずみ挙動を測定した結果,疲労損傷過程において,本来圧縮側にあるはずの上端鉄筋が引張挙動を示すなど複雑なひずみ挙動を示すことが明らかになり,上端鉄筋上面での水平クラックの発生やその上のかぶりコンクリートの砂利化との関連性を示唆する結果を得た.平成22年度は凍害,塩害,両者の複合劣化の程度と疲労耐久性能との関係を各種試験により明らかにする予定である.
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