研究概要 |
本年度は,本研究課題で前年度までに考案した試験方法および評価手法に従い,大型環境試験装置により塩害,凍害,塩害と凍害の複合劣化を与えた各実物大RC床版供試体(それぞれ塩害供試体,凍害供試体,複合劣化供試体)の材料劣化の程度を評価した.その結果,本試験条件において凍害供試体では劣化の進行が緩速であるのに対し,塩害供試体および複合劣化供試体では劣化の進行が速く,本試験方法の促進性が確認された.このうち,塩害供試体,複合劣化供試体については,輪荷重走行試験に供し,その疲労耐久性の評価を行った.これらの供試体の疲労耐久性は,屋外塩害暴露試験により得られた各供試体の疲労耐久性と比較検討し,その違いについて床版内部の鋼材腐食状況と関連付け考察を行った.一方,屋外塩害暴露試験を行ったRC供試体の曲げ試験,押抜きせん断試験の結果と輪荷重走行試験の結果との比較検討も行った.以上の検討結果より,塩害,および塩害と凍害の複台劣化を受けたRC床版の疲労耐久性は健全なものに比べ明らかに低下することが確認された.その原因は鋼材腐食に伴う鉄筋とコンクリートの定着が失われたことが主因と考えられる.そして,曲げ試験や押抜きせん断試験の耐荷機構は引張側にある下端鉄筋の鋼材腐食量に依存するのに対し,輪荷重走行試験ではむしろ上端鉄筋の鋼材腐食量に依存することが明らかとなり,融雪剤散布下の環境下においては上端鉄筋の鋼材腐食を抑制するとともにその周囲のコンクリートを健全な状態に保つことが維持管理上重要であることを明らかにした.
|