本研究の目的は、下水道管渠破損による管渠周辺地盤のゆるみ発生メカニズムを解明すると共に、その対策工の提案を行うことである。ここでは、下水道管渠周辺地盤を小型土槽内に作成し、土槽内において給排水を繰返してゆるみ・空洞の進展を再現させ、その現象についてX線CT装置を用いて解明した。また、より実際の現象を再現するために土槽底部に下水管模型を設置し、さらに破損形状および規模の違いによるゆるみ発生メカニズムへの影響について比較検討した。特に破損形状、地盤材料、拘束圧の変化および給水圧に着目し、X線CTスキャナを用いてゆるみ・空洞領域の発生メカニズムを3次元的に可視化し、それらを定量的に評価することを試みた。 最終年度である22年度では、21年度まで実施した模型実験により解明したゆるみ領域発生メカニズムを軽減させる対策工法の提案をめざし、以下の2つの対策工を対象とした実験を行った。そのケースは、(a)補強土技術の導入(ジオテキスタイル等の補強材を敷設することによる対策)、および(b)ゆるみ発生が起こりにくい地盤材料(比較的粒径の大きい砂地盤)の適用である。その結果、礫およびジオテキスタイルを用いた対策工は、地盤中の空洞形成、進展を抑制可能であることがわかった。またこれについては、当初は数値解析を実施することで現象の定量化を行うことを予定していたが、得られた現象が3次元下の複雑な挙動であったため、そこまでには至っていない。しかしここで得られた現象解明とその対策工の提案により、今後の本テーマに関する研究の方向性を示したことは大きな成果であると言える。
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