研究課題/領域番号 |
20360216
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研究機関 | 独立行政法人港湾空港技術研究所 |
研究代表者 |
佐々 真志 独立行政法人港湾空港技術研究所, 地盤・構造部, 主任研究官 (10392979)
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研究分担者 |
渡部 要一 独立行政法人港湾空港技術研究所, 地盤・構造部, 土質研究チームリーグ (00371758)
桑江 朝比呂 独立行政法人港湾空港技術研究所, 海洋・水工部, 主任研究官 (40359229)
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キーワード | 生態地盤学 / 底生生物 / 土砂物理環境 / 干潟 / 住み分け / 生物多様性 / 生物住環境診断チャート / 生態保全・再生策 |
研究概要 |
本年度に実施しか研究内容と成果の概要は次の通りである。 (1)生態/土砂物理の関わりに着目して筆者らが先駆的に開拓した生態地盤学の展開によって、稚貝から成貝までのアサリの潜砂性能を系統的かつ包括的に解明した。すなわち、アサリの潜砂性能は、1)潜砂速度・深さ・角度を表し、そのいずれも、粒状体・粘着性材料の種類やアサリの殻長によらず、底質の表面せん断強度によって支配されること、2)自沈領域上で鉛直潜砂可能な最適領域、潜砂モードが傾斜・部分潜砂に変化する遷移領域、ならびに潜砂不可となる限界領域によって特徴づけられること、3)提案する潜砂エネルギー概念モデルにより2)の発現形態ならびに潜砂特性の変化を整合的に説明できること、4)殻長2mmから10mmにかけて上昇し、10mm〜15mmで最高性能を発揮した後、50mmまで大きくなるにつれて低下していくことを世界で初めて明らかにした。このような潜砂活動の最適・限界場の存在と成長段階の違いによる潜砂性能の顕著な差異は、全国的に減少しているアサリ資源の復活及びその保全・管理を図るで、きわめて重要な知見といえる。 (2)多種多様な干潟底生生物すなわち節足動物(スナモグリ、テッポウエビ)、環形動物(ゴカイ、チロリ)、及び、軟体動物(アサリ、シオフキ)への生態地盤学手法の展開によって、潜穴、巣穴形成、潜砂等の住活動の形態や生物個体の大きさ・重さの違いに依らず、生物住活動の適合場と限界場の両者が生物種ごとに存在することを初めて明らかにした。さらに、これらの生物適合場と限界場の相互関係を現地土砂環境に照らして詳しく検証しうる生物住活動性能チャートを構築し、現在未解明に留まっている底生生物分布のなりたちをよく説明しうることを示した。それゆえ、本チャートは、学術基盤としてはもとより、生態保全・再生策の立案に向けた評価・設計・管理指針としての活用・発展性が非常に大きい。
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