以下の内容を実施し、研究のとりまとめを行った。 現地観測:2010年には出水らしい出水がなかったため塩水楔の回復過程に関する観測は行えなかった。そこで小出水の後に底質の集中観測を追加し、縦横断的に詳細な底質粒度分布調査を実施した。その結果、以前に推測した汽水域中流部で細粒土砂が流出しやすい傾向をデータとして明確に提示できた。また過去の出水前後に採取した底質の腐植(上流由来)と600℃強熱減量(下流由来)を分析し、出水後に堆積した上流由来の懸濁物が、塩水楔の発達後には下流由来の懸濁物に置き換わる様子が明確に認められた。600℃強熱減量は酸素消費に関係する鉄との相関が高く、土砂移動と貧酸素水塊発生の関係が推定された。 数値シミュレーション:前年の集中観測で捉えた塩水楔の運動過程を鉛直2Dモデルで再現した。また同モデルを用いて塩水流動による底質の輸送過程を推定した。洪水航空写真を解析して下流部の底泥洗掘過程を推測するとともに現象をモデル化して2.5次元モデルに組み込み、航空写真に表れている濁質パターンを再現した。3Dの塩水流動モデルを作成し貧酸素水塊の形成過程をシミュレーションし過去の観測データと比較して妥当性を確認した。 研究発表および総括:以上の結果を総括し、従来は個々に議論されてきた塩水楔の運動と底質移動および貧酸素水塊発生の特徴を考察し、汽水域の河道計画に関するポイントを取りまとめた。また塩水流動と底質特性にについて和文論文発表(2編)と口頭発表(5件)を行った。
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