研究概要 |
水理水工学の分野では水層として河川流を考えるとき,水層流と空気層流の共存流れ(気液混成流という)が重要で,河床シアーと界面シアーが同時に作用するため乱流現象はより複雑になる.既往研究では界面乱流と植生粗面に起因する河床せん断乱流は,別個に各分野で研究されてきたが,実河川の乱流・水域環境を総合的に評価するにはこれらの現象を同時に扱う必要がある.さらに,CO_2・O_2の吸収や赤潮・青潮の集積など水環境問題を詳細に検討するためには,3次元的な物質輸送メカニズムの理解が必要不可欠である.そこで2年目となる本研究では風波領域に対して3方向からレーザーライトシート(LLS)を照射し,風波を伴う閉鎖性水域の3次元的な流れ特性を解明した.本年度は,海洋で観測されているラングミュアー循環流に注目し.実験室で再現させ,その動特性を解明した.すなわち,流れの横断面の可視化計測を高速度PIVによって行い,循環流の時間平均構造や位相平均構造の特性を明らかにするとともに,渦構造の客観的な抽出に成功し,そのスケールを定量評価した.また本実験結果を安定解析し,ラングミュアー循環流形成に関わる支配パラメーターや循環流が流れ場に及ぼす影響を解明した.一方,植生せん断乱流に関する研究は,植生長さを変化させた5種類の柔軟植生モデルを用いて水路実験を行い,柔軟植生と剛体植生の特性を比較検討した.抵抗則を支配する植生のパラメーターについて検討し,植生密度と植生の剛性によって流れ抵抗が変化することを明らかにした.柔軟植生の揺動状態パターンを解明し,限界摩擦速度を用いた判定法を提案した.これらの成果は,2009年12月刊行のJournal of Hydraulic Researchに出版し,高い評価が得られている.
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