研究概要 |
22(23)年度は,人口減少に伴うサービス施設の再配置,再開発と撤退を認める場合の都市の空間構造の変遷,商店の逐次的立地による都心部空洞化等に関して理論分析を続けると共に,大規模団地の特殊性を社会移動の面から評価するためのデータ整備を行った。以下に概要を記す。 1. 1次元線分上に人口が一様分布し,サービス拠点が空間独占的に立地する初期状態から,人口減少に伴うセカンドベストな拠点統廃合を行う場合のサービスの維持可能性を検討した。人口減少後も一様分布が維持される場合と,従前の密度を維持するような人口再配置が行われる場合について,前者では人口減少の程度が少ない場合には寧ろ多くの拠点が維持できるが,地代増分を原資とする家計への補助金分配を通じた政府の介入が必要であること,後者では企業に対する一括補助金で,より大きな人口減少にも対応可能であること等,制度的な問題を含めて多くの示唆が得られた。 2. 地方都市では大型商業施設の郊外立地による都市構造の拡散化が顕著であり,高齢化に関わる買物難民の発生や中心市街地の空洞化問題を招く原因とされる。ここではAlonso型の1次元都市の枠組みを用いて複占型商業競争をモデル化したが,商店の参入が逐次的に行われると仮定することで,参入タイミングが立地・価格均衡と,都市の空間構造に与える影響が明らかになった。 3. 都市圏における少子高齢化の影響は,大規模団地において顕著であると認識されるが,国勢調査の小地域データを用いて多地域コホート分析を行い,社会移動の構造に空間的な差異が見られるかを検証する。そのために1995~2010年の東京都の町丁目別5歳階級別人口データを作成し,市区町村間の人口移動データと併せて人口遷移行列を完成する方法について検討した。また実証分析を精緻化する上で重要な,空間自己相関分析の手法についても一層の深化を図った。
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