下肢または上下肢に障害を持つ車いす使用者が、自動車を運転する際の安全対策について研究を行った。車いすドライバーにとって、カーブでは体幹保持が十分ではないことが、これまでの研究で明らかにできた。その影響は、速度とステアリングの操作が同時に要求されるカーブ走行時に大きく、特にカーブ退出時のステアリングを戻す操作時から直線復帰するまで、車体が大きく振られることが確認できた。体幹の保持力が低下すると、不安定な座位姿勢での運転操作になることから、道路整備の安全対策は、カーブ進入に対する(少し前からの)誘導方法とカーブ退出部分のゆとり部分の確保が必要であるといえる。しかし、これらは費用も大きく、長期的な計画が必要であり、行政レベルで実施されなければならない。個人レベルまたは企業レベルで実施できる短期的な対策であれば、その実現性は高い。走行条件によって操作手技が変わらず、運動機能を基準とした安定した座位姿勢を確保できる体幹保持装置(安価+既存の座席に取り付け可能)が開発できれば有効である。そこで本研究では、既存の運転座席に取り付ける体幹保持置の試作装置を開発した。本装置は、カーブなどの体幹バランスを崩しやすい状況下でも体幹を支え、無理なく運転することができるという特徴がある。保持ポイントの位置も重要で、胸椎の10~11番あたりから前屈することが分かったので、腰椎の1~2番あたりの高さで支持すると効果的である。また、構造がシンプルなため、コストが安く作れて、車を乗り換える際にもそのまま使用でき、車いす使用者だけではなく、下肢が弱ってきた高齢者ドライバーにも有効であると考える。
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