本年度は、重金属-農薬の混合暴露時における発現変動パターンの変動について検討した。まず、前年度と同様の手法を用い、農薬-重金属混合暴露時の細胞生存率(ニュートラルレッド法)を測定し、単一物質暴露時と比較して毒性が有意に増強もしくは減弱する条件(濃度の組合せ)を求めた。この条件下で、DNAマイクロアレイ解析を実施し、遺伝子発現プロファイルを得た。この結果と重金属単独暴露による発現プロファイル(準備状況参照)および農薬単独による発現プロファイル(平成20年度)を基に、重金属と農薬に特異的および共通する発現変動遺伝子の混合暴露条件下での変動、さらに混合暴露でのみ出現する遺伝子発現変動を選定した。また、実際の環境汚染に近い条件として、低濃度(細胞生存率に影響を与えない濃度)および長時間の暴露系においても同様の解析を実施し、農薬-重金属の複合長期暴露による発現変動解析を行った。得られた発現プロファイルは、既に構築しているモデル化学物質による発現プロファイルライブラリー(酸化ストレス、タンパク変性、DNA障害性等に対応)と比較し、毒性作用の推定を行った。その結果、混合による各物質毒性の変化(増強、減弱)、新規毒性の出現、およびそれらの長期暴露による影響が推定できると考えられる。これらのプロファイルの中から、その発現変動が特に顕著な遺伝子を選定し、毒性マーカー遺伝子としての有用性について検討した。
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