研究概要 |
河川生態系の構成要素である付着藻類と水生昆虫の生息に及ぼす金属の影響について室内実験により検討した。 まず、我が国で水生生物の保全のための環境基準として適用されたヒラタカゲロウに対する亜鉛とアルミニウムの急性毒性について検討した。水生昆虫は岩手県内の河川から採取し、河川水に亜鉛を0〜10mg/L添加して10日間観察した。その結果、0.028〜0.97mg/Lの範囲では亜鉛による影響はなく、それ以上の濃度では濃度が高い程、死亡率が増加し、LC50は4mg/L前後であった。また、アルミニウムについては濃度が0.056〜27mg/Lでは亜鉛より影響は少なく、7日間では50%以上死亡したものは認められなかった。 付着藻類については、珪藻のNitzschia palea(NIES-487)について亜鉛とアルミニウムの影響について検討した。リンとアルミの反応による沈殿を防ぐため、栄養塩類を添加せず、経時的なクロロフィルaの減少から検討した。実験は25℃、照度40001xの連続照射、一日数回の攪拌とした。その結果、亜鉛単独の場合には濃度が0.1mg/Lまでは阻害作用は認められなかった。アルミニウム単独の場合、重合核Al画分濃度が0.03mg/L程度と低い場合でも阻害作用が確認された。また、アルミニウムと亜鉛が共存する場合、Al_T(全アルミニウム)が0.1mg/Lでは、亜鉛濃度が0.1、0.03mg/Lと低い条件の時のみ複合的な影響が確認された。以上より、アルミニウムの濃度が低くても亜鉛の濃度が高くなった場合や、逆に亜鉛の濃度が低く、アルミニウムの濃度が高い場合ではいずれかの金属による影響が強く, 複合的な影響がないことが分かった。実河川では金属が単独で存在していることはなく、限定された金属種であるが、金属の複合影響を明らかに出来た。
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