研究概要 |
河川生態系の主要な構成要素である藻類と水生昆虫の生息に及ぼす金属の影響について室内実験により検討した。 水生昆虫は、岩手県盛岡市を流下する中津川で採取したヒラタカゲロウを用い、15℃に保った河川水にアルミニウムと亜鉛を添加し、それらの急性毒性について経日的な死亡率から検討した。その結果、単核アルミニウムでは、5mg/L程度までは影響は認められず、複合核アルミニウムでも5mg/L以上で影響が認められ、その影響の程度は単核の場合より大きいことが分かった。また、アルミニウムと亜鉛(1mg/L)を同時に添加した場合、単核及び複合核アルミニウム濃度が1mg/L程度までは複合影響が認められたが、アルミニウムの形態に関しては顕著な影響はなかった。アルミニウム濃度が3mg/Lでは、拮抗的な影響があり、今後さらに検討する必要がある。 藻類については、緑藻のScenedesmus acuminatusとChlorella vulgarisについて、亜鉛とアルミニウムの影響について検討した。リンとアルミニウムの反応による沈殿を防ぐため、栄養塩類を添加せず、経時的なクロロフィルa濃度の減少から検討した。実験は25℃、照度4000lxの連続照射、一日数回の攪拌とした。その結果、亜鉛単独の場合には両藻類とも環境基準の0.03mg/Lでも僅かではあるが阻害作用は認められた。ScenedesmusではAl単独の場合,単核Al画分濃度が1.0mg/Lで,重合核Al画分濃度が0.2mg/Lで阻害作用が確認された。AlとZn(0.03mg/L)が共存する場合、Alの濃度に関わらず相乗影響が確認され、全Al濃度中の重合核Alイオンの濃度が高いほど相乗効果は大きくなった。ChlorellaではAl単独の場合、単核及び複合核アルミニウムともに濃度が0.2mg/Lと低濃度でも阻害作用が確認された。AlとZn(0.03mg/L)が共存する場合、単核Al画分では濃度が高くなるほどいずれかあるいは双方の影響が大きく緩和され、重合核Al画分では高い濃度で複合影響が確認され、特に0.5mg/Lの場合にもっとも強い複合影響が確認された。
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