研究概要 |
1.晴天時排水(高度処理水)からの有機物の回収 下水処理水を採取し、過去に採取した試料と合わせ、詳細な評価を行った。採取した下水処理水をろ過・陽イオン交換することにより、溶存有機物を回収・精製した。また、合わせて下水処理水中の亜鉛・銅の化学形態を、キレート樹脂への捕捉性から調査し、不安定態の亜鉛、銅はそれぞれ4.8〜16.2μg/L、0.6〜3.3μg/L(それぞれn=8)であり、55%以上の亜鉛および銅が安定な錯体として存在していることが分かった。 2.錯形成能特性評価 項目1において回収された有機物の亜鉛、銅との錯形成特性を、アノーディツク・ストリッピング・ボルタンメトリーを用いて評価した。調査した3種類の下水処理水中溶存有機物に共通して、亜鉛・銅のそれぞれに対して2種類の安定度定数の異なる結合部位が存在し、その条件安定度定数の対数値は亜鉛の結合部位は7.1〜7.4と6.2〜6.4、銅は7.4〜7.7と6,4〜6.8であった。この安定度定数はIHSSのフミン酸、フルポ酸より高いものであった。 3.生物移行性評価 緑藻類Scepedesmus acutusの増殖に伴う、亜鉛の摂取と、それに与える、下水処理水中溶存有機物の与える影響を調査した。藻類細胞内の重金属類は、細胞表面の交換態と、細胞内部の溶存態・非溶存態の計3画分に分類し、前二者を高次捕食者への移行性画分と仮定した。その結果、下水処理水中溶存有機物の共存により、亜鉛の摂取量が減少し、同時に移行性画分も減少することが示された。
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