研究課題/領域番号 |
20360239
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 典之 東京大学, 環境安全研究センター, 准教授 (30292890)
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研究分担者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (20431794)
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キーワード | 亜鉛 / 錯形成 / スペシエーション / 生物移行性 / 下水処理水 / 溶存有機物 / 緑藻 / 水環境 |
研究概要 |
本年度は、生物移行性評価を中心に研究を進めた。緑藻類Scenedesmus acutusの増殖に伴う、亜鉛の摂取と細胞内への分布における下水処理水中溶存有機物の与える影響を調査した。さらに、培養液中の他の成分の影響について比較するため、C培地、M-11培地、江戸川河川水の3種類の培養液を用いた。下水処理水添加後の培地の方が高い藻類濃度となったが、亜鉛摂取量はこの増殖促進と比例した増加とはならず、特にC培地の場合には培養液中の亜鉛残存量が処理水添加によって大きくなった。摂取された亜鉛は藻類細胞表面の交換態と、細胞内部の溶存態・非溶存態の計3画分に分類し、前二者を高次捕食者への移行性画分と仮定した。移行性画分は6~437μg/g乾重、3~68%(細胞内総亜鉛あたり)となり、下水処理水の添加により、細胞内の総亜鉛含量だけでなく、移行性画分もまた、3つのすべての培養液において減少した。 また、環境中での有機物の生物学的安定性を調べるため、河川水を暗所で6週間培養して生分解反応を進めさせたのち、有機物を回収してストリッピングボルタンメトリー法により錯形成能を評価した。培養初期(5日間)で有機物濃度が半減し、その後は一定となった。培養開始前には2種類のリガンドが存在することが確認されたが、生分解反応の進行により、安定度定数の低いリガンドが検出されなくなった。 さらに、本研究に関連し「水環境での重金属の形態、環境動態と生物への影響」と題したワークショップを2月2日に東京大学にて開催し、国内の約20名の研究者で情報交換と討議を行った。
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