研究課題/領域番号 |
20360239
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 典之 東京大学, 環境安全研究センター, 准教授 (30292890)
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研究分担者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (20431794)
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キーワード | 亜鉛 / 錯形成 / スペシエーション / 生物移行性 / 下水処理水 / 溶存有機物 / 緑藻 / 光分解 |
研究概要 |
1.有機物の回収・錯形成能特性評価 以下の2の実験に用いるための溶存有機物試料として塩素消毒後の下水処理水を採取した。下水処理水中の溶存態亜鉛のうち、キレート樹脂カートリッジにより捕捉される画分(不安定態)は27%であり、初年度に得られた結果と大きな差はなかった。 2.安定性評価 紫外光照射による溶存有機物の錯形成能の変化を実験的に評価した。光源として中圧紫外線ランプを用いた。9時間の照射では有機炭素濃度に顕著な変化は生じず、紫外吸収については減少傾向が認められたものの差異は大きくなかった。光照射後の溶存有機物に対し段階的に亜鉛を添加し、キレート樹脂カートリッジへの捕捉性を調べることで、錯形成能の変化を検出することを試みた。亜鉛結合部位濃度の増大が示唆される結果が得られたが、実験結果のばらつきも大きく明確な結論は出すことが困難であった。しかし用いた光条件は実際の水環境と比較すると過大であると考えられることから、下水処理水中溶存有機物は放流先の水環境中において光化学的に安定であると考えられた。 3.生物移行性評価 昨年度までの結果から、亜鉛と銅では緑藻中の高次捕食者への移行画分への分布比率が異なることが示されている。この知見に基づいて、藻類とその捕食者である甲殻類(カイミジンコ)を用いた系によって、亜鉛と銅の毒性影響。(カイミジンコのLC50)を調べた。カイミジンコに対し無生物を餌とした際にはLC50が0.57mg銅/L、0.42mg亜鉛/Lだったのに対し、藻類を餌とした場合には0.30mg銅/L、0.72mg亜鉛/Lへと変化した。藻類中の捕食者非移行性画分への分布によって亜鉛の毒性影響が緩和されることが示唆された。
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