研究概要 |
新たな汚染物質として、生活で使われている医薬品の潜在的な環境影響が懸念され始めている。医薬品類は『低濃度で』かつ『特異的に』作用するように作られているため、その影響は広範囲に及ぶ可能性があるが、長期にわたる飲み水を経由した低濃度曝露での人体影響や水生生態系への複合影響はよく分かっていない。我が国では、行政、マスコミの関心が高まっているが、汚染実態、環境影響、対策技術の科学的知見は極めて不足しており、緊急に知見を収集する必要がある。そこで、 (1)医薬品類約60種類を対象に、懸濁態を含めた下水および下水処理水中の存在濃度を把握し、下水処理での除去機構を解明し、下水処理で医薬品類の除去率の推定技術を開発した。この手法を用いて下水処理場での約60物質の溶解態・懸濁態医薬品類の水処理系での収支を取った。 (2)これまで淀川水系を対象として医薬品類90種類の挙動を把握した結果から、流下過程に与える非生物的・生物的要因を考慮した、放流先河川での医薬品類の挙動の推定モデルを開発し、この結果光分解性と生分解性の実験的、文献的に寄与度を推定した。 (3)オゾン・AOPによる医薬品類除去の評価 CAM, AZM, DEET, CYP,ケトプロフェンなどの、オゾン、AOPでの分解実験を行い、LC/MS/MSを用いて対象物質濃度の時間変化を把握し、その生態毒性の低減を評価する。 (4)抗生物質は、病原微生物に薬剤耐性を与えている可能性が高いため、生物処理過程での薬剤耐性に関する変化を評価するための、耐性の遺伝子学的手法導入を基礎検討した。
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