研究概要 |
日本の河川は一般的に急流で河川長が短いため,降雨時に一時的に高濁度化するが,濁水がすぐに流下するために,降雨が終わればただちに清水に戻る特徴を有している。しかし,河川の開発にともない,山間部の河川にダムや堰などの人工構造物が建造されると,降雨時には,その構造物が上流域において発生した濁水の流下を遮るため,懸濁物質が貯水池内に貯留・滞留することとなる。濁水はその性質上,沈降速度が非常に遅いため,放水などの際には滞留した濁水を放流することとなり,下流河川において濁水が長期間にわたって生じることとなる。濁水の長期化が引き起こす被害は,景観・レクリエーション価値の低下,川魚などの水産資源への影響(成長阻害や漁獲高低下),生態系への影響,稲の生育阻害,水道用水や農業用水の浄化設備への影響などがあり,河川環境の悪化をもたらすともに,河川を中心とした様々な生産活動に影響を及ぼすこととなる。そこで,本研究では,濁水の発生源である貯水池上流域が濁水に及ぼす環境的影響を定量的に明らかにすることを目的として宮崎県一ツ瀬川上流域を対象として研究を行う。 今年度は,貯水池上流域の分析を行うために必要な基礎データの収集を行い,ーツ瀬ダム上流域の様々なデータ(地質,河川,地形,植生,崩壊地など)をデジタルデータとしてGISを用いて整理した。そしてその結果を用いて,濁度測定箇所の選定を行い,その後,現場確認を行った上で,一ツ瀬川本流を中心に濁度計を10カ所設置し,濁度および水位(流量に換算)の測定を行った。今年度は,大きな出水が発生しなかったため,十分な濁度データを計測することができなかったが,得られた濁度データを元に,タンクモデルを応用した懸濁物質量予測モデルを構築し,上流域の各種素因との相関性について検討を行い,河川長,崩壊面積,流域面積,乱雑層面積が濁水の発生に起因している可能性が示唆された。
|