研究概要 |
貯水池上流域の分析を行うために必要な基盤データの収集を行うとともに,データの見直しを行い,新たに一ツ瀬ダムを起点とする流域全体のGISによるデータベースを構築した。また,今年度も濁度および水位計測を6月~11月の5ヶ月間実施し,懸濁物質の流出量の計測を行った。 これらの結果および過去3年間の計測結果を用いて,降雨パターンを5段階に分け,各段階に応じたタンクモデルを基本とした懸濁物質流出量予測モデルを構築した。そして,本モデルから各流域における懸濁物質の流出特性を評価し,それぞれの特徴を整理した。その結果,流域によって,長期間濁水が継続する流域,急激に濁水が解消する領域などの違いを明らかにすることができた。 さらにこの予測モデルから,濁水発生に起因する素因を抽出した結果,濁水発生に影響を及ぼす因子として,河川長,乱雑層面積,非植生面積,日向層における崩壊面積,乱雑層の崩壊面積を抽出し,これらが懸濁物質の流出特性を決定づけていることを明らかにした。そして,これらの影響因子の空間分布特性から,対象流域全域の懸濁物質の流出分布特性を空間的に明らかにし,降雨条件に応じた懸濁物質の流出量を定量的に求めることができた。 最後に,この予測モデルの結果を流末における濁度と流量の実測値を用いて検証した。その結果,予測モデルでは,河岸での体積,集積および懸濁物質流出の時間遅れなどの影響を反映できていないという欠点を有しているものの,おおむね実測値との整合性を確認でき,今後の懸濁物質の流出量の予測,さらに濁水への対策に活用するには十分な精度を有していることを明らかにした。
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