研究概要 |
本年度は実スケールの機械固定工法防水層の台風時の屋外実測と、耐風性評価のための試験方法を検討し、以下の成果を得た。 1) 沖縄県宮古島の試験棟で、台風8号(2009年8月7-8日)時に、防水層固定部に生じる力の測定を行った。今回の台風は中規模のものであり、10分間最大風速は15m/sであったが、屋根コーナー部で150N程度の鉛直力、同程度の横力を観測した。この大きな横力の存在は、世界で初めて見出されたものであり、今回の観測の最大の成果である。 2) 次の台風20号(2009年10月24-25日)では、建物外周にパラペットを取り付け、その影響を調べるために、同様の観測を行った。今回の台風の10分間最大風速は16.8m/sであった。パラペットがあると、屋根部分の防水層の風環境としてはやや穏やかになり、防水層の固定部に生じる鉛直力、横力は、無い場合に比べて、概ね半分程度まで低下すること、またパラペット立ち上がり部の内側に作用する風圧力は、屋根面風圧力とほぼ同様な傾向にあることを明らかにした。この知見も世界で始めてのものであり、今後の立ち上がり部の防水層設計に有用なデータである。 3) これら観測結果をもとにして、防水システムの耐風性評価のために鉛直力と横力を同時に作用させる試験方法を、3種類検討した。すなわち、防水層の下側にエアバッグを挿入し、それを膨らませる方法,小形の円盤状試験体を用いて回転軸を中心に上下に回転させる方法,今ひとつは左右に移動させる方法である。これらについてはプロトタイプを完成させた。
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