研究概要 |
本研究では,浮屋根と液体の非線形性を考慮した大型液体貯槽のスロッシング解析法として,液体部分には液面条件(運動学的条件,動力学条件)を除く全境界条件を満たすポテンシャル理論の解析解を,浮屋根(液面)部分には有限要素法を適用する結合解法を開発し,縮小相似模型による振動台実験を実施してその妥当性を検証してきた。さらに,本解法を2003年十勝沖地震で浮屋根の沈没・火災の被害を受けたシングルデッキ型浮屋根を有する円筒石油貯槽(容量3万キロリットルおよび10万キロリットル)に適用し,被害原因の究明を試みてきた。本年度は研究期間の最終年度に当たるため,過去3ヵ年の成果を総括し不足の部分を補うとともに,浮屋根の耐震補強法を提案し,補強の効果を数値解析により確認した。本研究において得られた成果は以下のように纏められる。 1.浮屋根の応答には,周方向1次の線形振動モードのほかに,液面の非線形性や浮屋根デッキ部の幾何学的非線形性(膜応力効果)に起因する周方向0次,2次,さらに10万キロリットル貯槽の場合には3次の非線形振動モードが存在する。 2.非線形振動モードの存在により,浮屋根ポンツーンには鋼材の座屈限界を超える過大な応力が発生し,ポンツーンを損傷・沈没に至らせた可能性がある。 3.現行の消防法告示に定める浮屋根応力の評価法では,これらの非線形振動モードの存在が十分に考慮されてはおらず,浮屋根応力を著しく過小評価する危険性がある。 4.浮屋根の耐震補強に当たっては,これらの非線形振動モードの発生を抑制することが効果的であり,それにはダブルデッキ型への改修等によりデッキ部の曲げ剛性を,例えば3万キロリットル貯槽であればポンツーン部の0.7倍程度,10万キロリットル貯槽であれば0.1倍程度以上に高める方法が推奨される。
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