オフィスや学校の執務スペースを想定した実験空間において、室内環境を様々な要素から変化させて、その物理環境を計測するとともに、それらの物理環境要素の把握に適切な主観評価法の検討や客観調査手法の検討を行った。以下にその結果の概要を示す。 1.多様な光色を持つLED照明を用いたオフィスの増加が今後予想されるが、VDT作業のためのPC画面の光色と天井照明の光色の乖離は目の疲労を招き知的生産性への悪影響が考えられる。そこで、このような状況を想定した空間を主観的に評価するために被験者15名による実験を実施し、調査票の妥当性を検討するとともに、天井照明とPC画面の光色の差が知的生産性に及ぼす影響に関する知見を得た。 2.教室やオフィスの快適性に寄与し結果的に生産性を上げる要素として植栽の存在は重要である。植栽がもたらす環境要素である木洩れ日の把握と評価を行うため被験者8名による実験を行った。その結果、快適感を説明する尺度の抽出および物理量の関係性についての知見を得た。 3.休息時の周辺照度の変化が、執務作業の効率に与える影響や、人間の生体リズムの慨日変動に与える影響を解明するため、被験者8名による実験室実験を行った。その結果、執務中のパフォーマンス自体にほ大きな影響は見られなかったものの、休憩中の短時間に高照度光を浴びた場合でも、夜間の唾液中メラトニン今泌量や紀床時のコルチゾール分泌量が有意に増加し、生体リズムの改善が期待できることが確認できた。 4.国内外の知的生産性研究の動向を前年度に引き続き調査し、この分野の最新研究情報を収集した。
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