研究概要 |
医療施設における音声明瞭度及びスピーチプライバシの設計指針を検討するにあたり,本年度は,神戸市内の総合病院をモデルケースに,現状把握を行った。神戸市内の総合病院の診察室の音場を,実測調査の結果に基づいて実験室内で再現し,高親密度単語を用いた単語了解度実験を行って,実音場における音声明瞭度とスピーチプラィバシの程度を評価した。その結果,以下を明らかにした。(1)オープンプラン型の診察室において会話を行った場合,その隣室における単語了解度はほぼ100%であり,会話の内容は全て聴き取ることが可能だと考えられる。 (2)個室型の場合,会話時に声をやや大きめ(65dBA)に出した場合は,隣室の騒音レベルが35dBA程度まで下がると,単語了解度が50%程度まで上昇し,会話の内容が分かる可能性があるが,声を普通程度(58dBA)あるいはやや小さめ(52dBA)に出した場合は,隣室における単語了解度はほぼ0%であり,スピーチプライバシは確保されていると考えられる。(3)改善例として,オープンプラン型の診察室を仕切る衝立をT字型とし,回折減衰を大きくすることを試みた結果,会話時の声の大きさがやや小さめで,かつ室内の騒音が45dBA程度であれば,単語了解度が10%程度まで低下し,スピーチプライバシを確保できる。(4)スピーチプライバシと関連が深い単語了解度を予測できる物理的評価指標として,SNRuni32(Park et al.,J.Acoust.Soc.Am.,123,1458-1471)とA特性のSN比の2つを検討し,いずれの指標でも単語了解度を予測可能であることを示した。
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