研究概要 |
本研究を実施する目的で、2008年12月に人工気候室を建設し、温度は20℃〜35℃±0.5℃、湿度は40%〜70%±2%、風速は0.1〜2.0m/sの基本性能を得た。皮膚の発汗・蒸発に関する研究では、35℃70%の暑熱環境下で発汗量と風速の関係に関する被験者実験を行った。その結果、部位別の発汗量と風速の関係は、個人差が大きいものの、概ね風速が上昇するにつれて発汗量が低下する傾向が見られた。また、全身発汗量は、部位別の発汗量に比較すると個人差が小さく、風速の影響も少ない結果となった。全身蒸発量は、風速によって変化し、風速が低いほど蒸発率が低下することが確認された。 身体周辺微気象のCFD解析では、数値サーマルマネキンの熱損失量を精度良く解析することを目的に、種々の乱流モデルを用いた解析を実施し、既往実験結果との比較を行った。LKモデルを用いた3次の低Re型K-εモデルが既往研究結果と良好な対応関係を示した。またLKモデルは無風時にも適応できることを確認した。 サーモグラフィ装置による皮膚表面の濡れ面温度の計測法の開発では、皮膚表面が汗で覆われている部位や蒸発している部位における皮膚表面温度測定の手法を検討した。 熱・換気マクロプログラムの検証データの取得では、密集住宅地の建物外表面の風圧と接線方向動圧のデータベースを作成し,建蔽率の違いによる風圧係数と接線方向動圧係数の特徴を把握した。次に、通風局所相似モデルLDSMモデルと換気回路網プログラムCOMIS及び多数室温熱解析プログラムTRNSYSを連成させて,通風利用による戸建住宅の冷房負荷の削減効果を評価した。その結果,積極的に通風を取り入れた場合,冷房負荷の削減率は各建蔽率とも50%以上あることが明らかになった。
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