研究概要 |
皮膚の発汗・蒸発に関する実験では、空調システムと気流生成装置を改修した通風型人工気候室を利用して、変動風の発汗冷却効果を明らかにする目的で、被験者実験を行い、発汗時の人体ぬれ面積率、皮膚温、発汗スペクトル等を測定した。平均皮膚温は気流周期によらず、ほぼ一定であった。末端部の皮膚温は、深部温に比べて気流周期が大きくなると、やや高くなる傾向を示した。皮膚の発汗量周期は気流周期と高い相関があった。短周期の気流変動よりも、長周期のときに汗の蒸発放熱が促進され、ぬれ面積率は、周期定常風の周期が大きくなると低下する等の知見が得られた。 数値人体モデルを用いた身体周辺微気象のCFD解析及び精度検証では、多面体セルで数値人体モデルを作成し、実際の市街地に建つ戸建住宅における室内通風現象をCFD解析した。流入空気温度を外気温とし、内壁は各部位に分け、それぞれ実測より得た30分間の平均温度を与えた。乱流モデルは三次非線形低Re型k-εモデルにLKモデルを組み込んだものを使用した。実測結果とCFD解析結果に比較的良好な対応が見られた。 サーモグラフィ装置による皮膚表面の濡れ面温度の計測法の開発では、昨年度に引き続き人工気候室において被験者実験を行い、計測法の精度検証用の皮膚表面温度データを収録した。 通風時における戸建住宅の冷房負荷削減効果に関する研究では、日本の主要都市における年間の冷房負荷に関する検討を行った。その結果,,積極的に通風を取り入れた場合,積算冷房負荷は11~18%削減できることが明らかになった。 自然換気利用建物の実態調査及び設計資料の整備では、昨年度に引き続き、千葉県の官庁ビルにおいて、室内温熱環境と自然換気量について、中間期と夏期に実測した。中間期の換気回数は3~7回/h確保されていた。自然換気口が開いていても流入気流が足元に流れたので、執務者の60%が気流を感じないと申告した。夏期は空調気流の影響が大きくなり、中間期より気流を感じると申告した執務者が20%増加した。PMV値と寒暑感申告値は、夏期のほうが中間期よりもよく対応していた。 自然換気利用建物の空調エネルギー評価分析では、初年度に開発した熱・換気連成マクロモデルを用いて、自然換気利用建物の年間空調エネルギーを算出し、空調利用のみの建物と比較して、省エネルギー効果を分析した。
|