研究課題
重要伝統的建造物群保存地区である金沢の「ひがし茶屋街」は、防火対策が希求される一方、木造建築の正面外観上、最も防火対策が困難な対象として研究的意義は大である。隣接建築と側壁を接した建築形式が、防火上の弱点である。そこで、この側壁を耐火構造と想定してシミュレーションを行った結果、裸木造では7分であった延焼時間を9分に遅延させることができた。また、茶屋街の端部に位置する建物のみを防火構造に置き換えた場合は、全焼時間を231分から273分へと大幅に遅延させることができた。また、それぞれ異なる建築形状を単純化して複雑な解析を回避する「典型モデルによるシミュレーション方法」を開発した。以上、最も防火対策が難しい対象に対して端緒を開いた意義は大である。次に典型的な木造密集市街地である防災重点地区の「幸町・菊川地区」を対象とし、まず、細街路を拡幅せずに「空間の隔て効果」を高める前庭の効果を確認した。足軽地区としての伝統から、道路幅員2.9mでも向かい合う前庭をそれぞれ奥行1.8m(1間)程度確保した箇所では、延焼が遮断された。さらに、延焼が広がりやすい危険箇所をシミュレーションに見つけ出し、その要因として、木造家屋の密集、付近に耐火構造建築や空間地が存在しないという共通点を明らかにした。また、昭和戦後に防火木造に建て替わった家屋も増えているため、耐火建築の効果的な配置方法をシミュレーションにより検討した。その結果、耐火建築は少数でも延焼遅延効果が認められ、とりわけ規則的に防火帯を構成した場合は延焼を遮断することが可能となった。同地区における避難誘導シミュレーションでは、小学校の建物から多人数の児童が避難する時間を含めて、街路への誘導を図る必要性を認識することができた。以上、典型的な木造密集市街地に対する防火対策の可能性を見いだした意義は大きい。
すべて 2009
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23^<rd> Congress of the Association of European Schools of Planning, July 2009 Liverpool, UK 23^<rd>
ページ: 125-126