本研究の目的は、未だ明らかになっていないカンボジアの都市居住の特性や都市空間の構成等を明らかにすることを通して漸進的な開発に向けた建築・都市計画手法を明らかにすることにあるが、今年度は特にプノンペン都心部に現存する高床式住居を空間構成の分析をもとに都市居住の特性を明らかにした。 明らかにしたのは以下の4点である。 (1)高床式住居は、分割・増改築が行われながら、多家族が生活する住居へと変化している。住戸の空間構成は、前面の中間領域の有無と、空間構成要素の配列から4つに類型化できる。前面から順に団攣空間、個室を配置し、トイレ・水浴び場、台所を奥に配置して住戸前面の部屋から分離させ、外部と住空間の間に、多目的空間、ベランダ、店舗・作業スペースなどの中間領域を設ける傾向が強い。(2)各住戸は木造躯体内に配置した居間、個室などの室内空間をベースに、躯体外に新たに台所、水浴び場、トイレなどの機能空間を付加し、各住要求を充足させていく過程で高床式住居を変化させていった。(3)一つの空間が分割されることで住戸へのアクセスは限定されるが、通路の保持、複数パターンの階段配置、廊下・ベランダの共用が、個々の住戸の位置や形態に適したアクセスを与えている。(4)各住戸が完全に独立した生活空間を確保できない場合、生活空間を共用することで各機能を補完している。共用される生活空間としては、トイレ・水浴び場、台所、多目的空間などがあげられる。また、入口、通路、階段、廊下などを共用することで、限られたスペースの中でアクセスを確保することが可能になっている。
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