1991年に内戦を終えたカンボジアでは、東南アジアの諸都市がこれまでに経験したような急激な開発が、いま進展しつつある。居住環境の急速な改変により都市の個性が失われ、地域の中で長い年月をかけて培われてきた文化、自然、社会に適合した固有の居住形態、居住環境や町並みが破壊されつつある。地域の固有性を保持した開発を進めるためには、地域の社会・文化形態に即した漸進的な開発に向けた建築・都市計画手法の開発が急務である。しかし、内戦により研究資料が散逸したカンボジアにおいて、都市の居住実態を明らかにした研究は非常に限られている。本研究の目的は、未だ明らかになっていないカンボジアの都市居住の特性や都市空間の構成等を明らかにすることを通して漸進的な開発に向けた建築・都市計画手法を明らかにすることにある。
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