次の2項目に関して実験と解析を実施し、指向性を有する微小球レーザーの作製に必要な要因とその応用について、今後の重要な指針となる知見を得ることができた。 (1)希土類金属イオン添加ガラス微小球の作製と光信号増幅のための基礎実験 希土類金属イオンNd^<3+>を添加した超半球ガラスを作製し、自作したファイバカップラにより、ガラス微小球への光カップリング実験を行った。CWTi:Sapphire(チタンサファイア)レーザーを波長可変光源として、波長800nm帯で微小球を直接励起し、同時にファイバカップラにより信号光(波長1060nm)を導入して、発振光を測定した。レーザー励起による温度上昇(室温→70℃)に由来するピークシフトと増幅の重なりとして発振光の増加減少が観測された。ピークシフトについては、温度増加による物性変化からそのシフト値を推定し、実験とのよい一致を得ることができた。本基礎実験により、微小球光共振器での光増幅機能と、光スイッチングの可能性が示されたことになる。 (2)微小球を対象とした波長可変レーザーによる光カップリング実験 コア部を研摩し露出させた光ファイバカップラを作製した。これを用いて、励起され共振状態にある微小球からの「発振光取り出し」の実験を行い、微小球光共振器からの共振光の読み出しに成功した。シミュレーション計算により、光導入と光読み出しは相互関係を有し、微小球の閉じ込め効率(Q値)には最適値が存在することを明らかにした。これらの実験により、一方向に光を取り出す指向性発振には、球の閉じ込め効率を最適にする素子設計が必要となることを明らかにした。
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