本年度の目標は、階層的集積化ナノ結晶の制御法の開発と界面機能物性の評価およびその合成法へのフィードバックである。現状では、電気化学機能および生体機能の2テーマに集中して取り組んでいる。 (1)酸化物およびリン酸塩ナノセラミックスによる電極機能への展開20年度の成果として、水溶液系における有機分子制御による結晶成長法および中間体経由法によるバイオミネラルに類似した階層的構造体の開発がある。これによって得られたナノ構造酸化スズ、ナノシート状マンガン酸化物、階層的リン酸鉄系化合物、および多孔質マンガン酸リチウムについて、その構造制御を精密化するとともに、それらの光電特性およびLi電池正極としての特性を検討した。その結果、直接遷移に由来する特異な電気化学特性をもつ一酸化スズナノシート、特異なサイクル特性を有する3価のマンガン酸化物ナノシートなどの階層構造に関連する特性が新たに見いだされた。また、マンガン酸リチウムについては合成法の再検討をおこない、低温において高い特性を有する多孔質体の作製に成功した。 (2)リン酸塩ナノセラミックスによる生体機能への展開20年度に開発した水酸アパタイトなどのリン酸カルシウム系結晶の合成手法を改良し、二種類のリン酸カルシウムから構成されるメノ結晶構造体を合成し、その生体との親和性を検討した。100nm以下の水酸アパタイトナノ結晶のみでは骨芽細胞や繊維芽細胞の活性への強い抑制作用が見られたのに対し、溶解性の高いリン酸塩結晶を含む場合には骨芽細胞の成長の促進効果も見いだされた。この成果は、ナノ構造と組成制御がおよぼす細胞との相互作用への影響として着目され、今後の展開が期待される。
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