本研究では、水溶液系における金属イオンと有機分子やマトリクスとの相互作用を活用し、酸化物系およびリン酸塩系材料においてバイオミネラルに類似した階層的集積化ナノ結晶の構築法を検討するとともに、それらの電気化学・光触媒・生体適合性などの機能の調査をおこなった。マトリクスを利用した結晶成長により合成したマンガン系およびスズ系酸化物の階層的集積化ナノ結晶では、合成条件によって多様な酸化状態の化合物の作製が可能であり、Liイオン二次電池の正極および負極活物質としてサイクル特性・レート特性に優れた機能を有することを見出した。また、中間体を経由した合成ルートを用いることでナノロッドやナノシートから構成された水酸アパタイトの階層的集積化ナノ結晶が得られ、細胞との適合性について検討をおこなった。その結果、水酸アパタイトのナノ構造が各種の細胞の接着性や増殖性に影響を及ぼし、その活性をコントロールできることが示唆された。原料や反応条件を制御して水溶液から析出させた二酸化チタンの階層的集積化ナノ結晶では、酸化・還元反応の選択性をもつ光触媒活性を付与することが可能であった。以上のように、多様な機能性材料において階層的集積化ナノ結晶の作製手法を開発するとともに、それらの優れた機能性を実証することに成功した。
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