強磁性形状記憶合金NiMnGaは単結晶で数%の磁場誘起ひずみを発生するが、磁場除去だけではそのひずみは回復せず、また、多結晶体では脆く、加工できないなどの問題点がある。これらの克服のため、NiMnGa多結晶から粉砕などで単結晶化し、磁場に透明で延性であるポリマーと複合することで実用レベルの特性を示す複合材料アクチュエータができると考え材料開発を行っている。昨年度は、多結晶から作製したNiMnGa粒子を分散したポリマーコンポジットを作製し、その磁場誘起ひずみを測定し、磁場によりマルテンサイトバリアント再配列は起きていると推測できたが、発生ひずみ量は25ppm程度と、期待した1%程度より極めて小さく、その原因の解明のために磁場動作を確認した単結晶粒子との複合化の研究が必要であると結論された。このため、本年度は、昨年度の研究に加え、単結晶をフローティングゾーン法で作製し、磁場による再配列挙動を確認した後に、ポリマーと複合化した。マルテンサイトバリアントの再配列を光学顕微鏡と振動試料型磁力計で測定すると共に、X線マイクロCTにより実際に複合材料内部の粒子の分散や変形挙動を測定した。その結果、作製した単結晶が磁場でバリアント再配列を起こすことを確認した。また、マイクロCTにより粒子がマトリクスポリマー中に均一に分散し、また、応力で均一に変形することを明らかにした。次に、その単結晶をシリコーンと複合化し、NiMnGa粒子が23vol%以上であれば磁場でバリアント再配列するが、それ以下ではマトリックスの弾性拘束により変形しないことがわかった。さらに、ポリマーをエポキシとした場合、ポリマーの弾性拘束がシリコーンより大きいため、23vol%NiMnGaの複合材料では磁場印加ひずみが発生しないことも明らかになった。このように、本複合材料の動作ひずみは、NiMnGaの体積率とマトリクスポリマーによる弾性拘束に大きく依存することが明らかになった。
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